夏に適したスーツとは【横浜西口店】
こんにちは。
5月も半ばになりすっかり熱くなりましたね。
リネンやモヘアなど夏らしいドライな生地感が楽しい季節です。
前回の投稿からだいぶ間が空いてしまいましたが、引き続きこちらの2着を比較していきたいと思います。
前回の記事にて素材の違いをお話し致しました。
リネン等を混紡することでブラウンのスーツが涼しげな生地感になっています。
今回は素材ではない部分で比較をしてみましょう。
店頭の生地には様々な表記があります。
素材も勿論ですが、本日はこの中から目付(重さ)と織り方に注目してみます。
まず、どちらの生地にも250g/mの記載があります。
こちらは1m当たりの生地の重さの表記です。
殆どの生地が約150㎝巾で織られ、日本の基準ですと50mで1反となります。
スーツ1着あたりの生地の尺が約3mほど。
その中の1m当たりが約250gという表記。いまいちピンとこないですね。
単純に数字が小さければ軽く、大きければ重い生地ということになります。
昨今の気候や室内の空調設備等を踏まえて一般的には、
260g/mほどが季節を問わず着用しやすい所謂オールシーズン物といわれます。
そこを境に軽ければ春夏、重ければ秋冬というのが一般的かと思います。
昔と比べると軽い目付の生地が多くなりましたが、今でもツイードやフランネルなどでしっかりしたものは400g/mを超えるものもありますし、
盛夏向けの生地ですと200g/mを切るような超軽量生地もあります。
今回の2着でいうとどちらも250g/mと目付は同じですので所謂オールシーズン物のように思われます。
が、もう一つ重要な要素が大きく異なってきます。
それが生地の織り方です。
ブルーの生地のタグにはTWILLという文字がございます。
こちらの表記が生地の織り方を表しています。
スーツなどの生地を構成する織組織は大きく分類すると3種類ございます。
その中でも弊社で最も取り扱いが多くお仕立ていただくことが多いのは綾織という織り方です。
先ほどのTWILLという表記は綾織をさしています。
織物は縦に引き伸ばした経糸に対して緯糸を交差させる形で織られています。
綾織ですと経糸が複数のヨコ糸の上を通過した後、1本のヨコ糸の下を通過することを繰り返して織られています。
斜めに畝が見えるのが見た目の特徴になります。
糸を浮かせる部分が多く経糸が長く表面に出るため柔らかく光沢が出やすい織り方です。
また、糸同士の交差点が少ないため隣り合う複数の糸が接近しようとするので、
糸同士の密度を高め隙間の少ない厚手な織物を織りあげることができます。
一方ブラウン生地は表記はないのですが平織りという織り方になります。
経糸と横糸を1本ずつ交差させて織られる織り方です。
糸同士が交差する部分が多くなるので張りがあり耐久性に富んだ生地を織ることができます。
また、交差する点が多い分糸同士が離れようとするので隙間が多く通気性に優れた生地になります。
タッチもシャリ感のあるドライなタッチとなるため、
夏向けの薄手の生地は平織りで織られることが多いです。
透かして見ると違いは一目瞭然です。
もちろんそれぞれメリットデメリットはありますが、
暑い時期に向けて涼しくするためには平織りが圧倒的に通気性の良いスーツとなります。
同じ目付でも織り方が変わることで着用感は全く違います。
地中海のようなからっとした気候であればブルーの綾織の生地でも
問題ないですが、日本のようなじめっとした湿気の多い気候ですと、
平織りが適してくると思います。
様々な角度から比較をしてみると、
何故ブラウンの生地がより夏向けかということが
お判りいただけたのではないでしょうか。
店頭でも5月に入り平織りの生地でのご注文が増えてきております。
空調設備が整った昨今ですと、衣替えの文化も薄れてきており、
通年同じスーツを着られる方も多いかと思います。
また、昨今のビジネスシーンのカジュアル化によって、
スーツを着なくても良い方も多いのではないでしょうか。
そんな中でも紳士服においてスーツが確固たる地位を確立しているということは、
それだけスーツという服に重要な意味があるように思います。
既製服が一般的な世の中でせっかくオーダースーツをお作り頂くのであれば、
TPOや季節に合わせた生地をお選びいただくことでよりその価値を見出していただけるかと思います。
長くなりましたが今回の比較はこのあたりで終わらせていただきます。
夏物スーツをお考えの方は是非店頭にてスタイリストに、
「平織りで軽めの目付の生地は」と仰ってください。
少しドキッとしながらしっかりとご提案させていただきます。
横浜西口店
曽根