ジャケットの話 本切羽(本開き)編【名古屋広小路通り店】
こんにちは。
鈴木(晴)です。
本日は本切羽(本開き)についてのお話です。
本切羽とは袖の釦が実際に外せる仕様のことです。
ちなみに、開かない仕様のものは「仮切羽」と言います。
英語では「Surgeon’s cuffs」といい、その起源は今よりもシャツが下着だという考えが根強かった時代、軍医が治療の際袖が汚れないように捲れるようにしたことからと言われています。
左:本切羽(本開き)
右:仮切羽
正確には本切羽は袖が開閉できる仕様の事で、古いスーツやビスポークスーツでは釦がただ縫い付けてあるだけの状態(写真右)でもスナップボタンで開閉できるものがあります。
本開きとはボタンホールが実際に穴が空いてる仕様の事で、穴が空いていても袖自体は開かないスーツもあります。
近年のオーダースーツ業界では、この2つの要素が合わさったものを「本切羽」あるいは「本開き」と呼んでいます。
紛らわしいですが、このブログでも上記2つをまとめたものを本切羽と記載していきます。
オーダースーツを作ったことがある方なら一度は言われたことはあると思います。
「本切羽にするとオーダーであるという特別感があります」と……。
最近では既製品でも本切羽にできるものがごく一部で出てきていますが、ほとんどは袖の開かない仮切羽仕様です。
そのため本切羽はオーダースーツの証と言っても過言ではありません。
しかし、ほとんどの店では2000円~のオプション料金がかかってしまいます。
有料となれば、悩みますよね。
では、本切羽にすべきか否かはどこで決めればいいのでしょうか。
スーツの本場であるイギリス・イタリアではどのようにしているのかご紹介します!
イタリア
イタリアでは本切羽にする人が多いです。
ボタンホールというのは技術レベルが顕著に表れる箇所と言われており、昔職人たちが競い合って本切羽仕様にして自身の技術をアピールしていたところ、それが主流になったと言われております。
インスタグラムなどでもイタリア系のスーツを着ている海外の方は、釦をいくつも開けてラフに着ている人も良く見かけます。
中には袖まくりしている人も見かけます。
イギリス
イギリスでは現在でも仮切羽が多いです。
本切羽にしたとしても、一番後ろ(肩側)は仮切羽にしていることがほとんどです。
これは、イギリスにおいてのスーツの考え方によります。
スーツは父から子へと受け継がれるものという考えがあり、子は親よりも大きく育つことを期待し後で袖を伸ばすことが出来るように開かないようにするのです。
また、イタリアでは一番外側の1つを外してオシャレを楽しむ人も多いですが、イギリスでは本切羽になっていてもすべての釦を止めている人がほとんどだとか。
日本でも、オーダーであることを密かにアピールできるため本切羽にして1つだけ外している人も街中でよく見かけます。
私はイギリスが大好きなので仮切羽でもいいのですが、本切羽にして開けずに着用しています。
というのも仮切羽の場合、糸をボタンホール風にかがってあるだけのものが多く、「開かないけど見た目の仕上がりは本切羽と一緒」という仕様にできない店が多いので、私はこんなことをしています。
スーツの本場”サヴィル・ロウ”では、仮切羽(実際に開かない仕様)でも本切羽のような見た目の仕上げになってることが多いようです。
(糸がかがってあるだけで、実際には開かない)
迷っている方はぜひ参考にしてみてください!
名古屋広小路通り店 鈴木(晴)