ジャケットの話 フロントデザイン編【名古屋広小路通り店】
こんにちは。
鈴木(晴)です。
今回はジャケットのフロントデザインについてのお話です。
ジャケットについては選べる種類は少ないものの、どれがどういうものなのかわからない方も多いかと思います。
ジャケットの大まかな種類(今回はグローバルスタイルで扱っているもののみ)と、いつも通り各国の事情を軽く交えてお話します!
ジャケットのフロントは、大きく分けてシングルブレスト、ダブルブレストの2つに分かれます。
左:シングルブレスト
右:ダブルブレスト
その違いは、ボタンが縦一列か二列かとい違いです。
その中でも、ボタンの数によって受ける印象も変わってきます。
シングル1つボタン
ボタンが一つの為、Vゾーンが深くなり、ドレッシーな印象になります。
スーツのデザインとしてイギリスで仕立てられることはありますが日本で見ることはあまり無く、ディナージャケットやモーニングコートなどは日本でも主流のデザインです。
シングル2つボタン
現在、最もスタンダードなデザインです。
ボタンが縦に2つ並んでいるデザインで、既製服のほとんどはこの形になります。
イタリア系のスーツによく合います。
座る際は、ボタンを外して座ります。
(たまにこれを知らない人がおり、面接などで怒られた経験があります……)。
シングル3つボタン(段返り)
ボタンが3つ縦に並んでおり、そのうち真ん中だけを留めるデザインです。
見た目はシングル2ボタンと同じです。
これに似たものでシングル3つボタン中掛けという、衿(ラペル)の返り位置が高いものもあります。
イギリス系のスーツに多いデザインです。
ダブル6ボタン2つ掛け
ボタンが横2列、縦に3つ並んでおり、真ん中の1つないしは2つ留めるデザインです。
軍服が元となったと言われており、それが貫禄を感じる要因の一つとなっています。
スーツにはアンボタンマナー(※後述)がありますが、ダブルに関しては特になく、1つ外しても2つ留めても問題ありません。
また、座る際はボタンを外さなくても問題ありません。
アンボタンマナーとは
スーツを着用する際、一番下の釦は外しておくというルールです。
これは中に着るウエストコート(ベスト)も同じです。
スーツの型紙、構造上一番下のボタンを留めてしまうと変な皺が入ってしまうためです。
無駄を嫌う英国人たちは、なぜそんな無駄とも思えるデザインを残したままだったのでしょうか。
元々、1900年以前は全ての釦は留めてある状態でした。
当時イギリスの国王だったエドワード7世は大変な美食家で、どんどんと体型が大きくなっていきました。
ある日、晩餐会で食事をしていたところ、お腹周りが窮屈になったことからボタンを外しました。
当時の紳士たちは下着であるシャツを見せることはとんでもない恥だと考えていました。
直接見えなくとも、見える可能性が高くなるボタンを外す行為は紳士としてあり得ない行動だったのです。
それに対して周囲にいた貴族たちは国王に恥をかかせてはならないとボタンを開けたことが起源と言われています。
変化を嫌い、安定を望む英国の貴族たちはジャケットのデザインはそのままに、ボタンを外しても問題がないスーツを着るようになったのです。
では実際に仕立てる際、どのデザインにしようか迷う方も多いと思います。
いつものごとく、国別の特徴を交えてご説明します!
イタリア
2ピースで仕立てる場合はシングル2つボタンが多いようです。
ウエストコート(ベスト)を付けた3ピースの場合はシングル3つボタンで仕立てるのがクラシコのデザインに近いなります。
着丈を短めにすると一気にイタリア系の雰囲気になります。
イギリス
Vゾーンが浅いものが良く好まれるイギリスでは、シングル3つボタン(段返り・中掛け)が多いです。
基本的に3ピースで仕立てることがほとんどである為、フロントデザインにおいてはイタリアとほとんど変わりません。
着丈を長くするとイギリス系の雰囲気になります。
結論、シングルの場合は3つボタン段返りがオススメです。
ビジネスの場でなければ、ダブルもいいかもしれませんね。
参考にしていただければと思います。
鈴木(晴)