ジャケットの話 裏地編【名古屋広小路通り店】
こんにちは。
鈴木(晴)です。
今回はジャケットの裏地のお話です。
スーツをオーダーしたことがある方ならば、必ず裏地を選んでいるかと思います。
色柄の合わせ方を語ると、色相環などのデザインの話になり10000字あっても足りませんので今回は語りません。
ここでお話しするのは裏地の張り方についてです。
なんとなく総裏は暑そうだから背抜きにするという方が多いのではないでしょうか。
確かに総裏は暑いですが、裏地の役割を知れば気が変わるかもしれません。
裏地が何のためにつけられるようになったのか、裏地の役割は何なのかお話していきます!
そもそも裏地とは保護と補強、目隠し的な意味合いで付けられていました。
保護と補強
スーツの裏側は着用時はシャツと擦れることになります。
表地は手触りが滑らかであっても布同士となると損耗が激しくなり、シャツやスーツの傷むスピードが速くなります。
また、汗をかくと、それを吸収したシャツが表地に直に触れてしまいます。
スーツ生地にとって一番の天敵は水分(湿気)です。
これもスーツの寿命を縮める原因の一つです。
こういった摩擦や水分から保護し、スーツを奇麗に保つ役割があります。
加えて、裏地を貼らない場合には生地の重みで縒れてしまうので、シルエットを美しく見せる補強としても裏地は活躍しています。
目隠し
スーツの表地と裏地の間には毛芯、フェルト、肩パッド、ポケット、縫い代の折り返しなど様々なものが入っていてその見た目はかなり散らかっています。
毛芯は硬く、触り心地もチクチクしているためシャツ越しとはいえ触れれば不快に感じるでしょう。
それを隠すために裏地が張られています。
続いて裏地の張り方です。
総裏
袖、肩、背中、身頃といったジャケットの内側すべてに裏地が張られている仕様の事です。
ヨーロッパでは夏用のスーツであってもこの総裏が基本となります。
(カジュアル用であれば背抜き仕様も多いようです)
礼服などの既製品は総裏であることが多いです。
メリットは前述したとおりスーツの生地が傷むのを防いでくれます。
また、ポケットやベントが風などで靡いた時に裏地によってはオシャレを演出する事が出来ます。
デメリットとしては熱がこもりやすいということです。
キュプラなどの通気性のいい素材でも夏に着たまま外を歩くのは厳しいかと思います。
背抜き
その名の通り、背中部分の裏地がない状態を言い、その他は総裏と同じです。
日本やアジア圏でよく作られる仕様で、裏地が無い分通気性が増すため熱がこもりづらいのが特徴です。
既製品のほとんどは秋冬向けであってもこの形で売られている事が多いです。
アジアはヨーロッパに比べて湿度が高い為、熱がこもりやすい為にこの形が主流となりました。
メリットは通気性が良く熱がこもりにくい為、猛暑でなければ比較的快適に過ごせます。
デメリットとしてワイシャツの色が明るいと透けやすく、裏地の境目が分かりやすい所です。
半裏
背抜きよりも裏地面積が小さく、袖、肩、脇腹から前身頃部分のみとなります。
盛夏用のスーツで作られる方がおり、肩パッドや芯などもなるべく薄いものが使われます。
大見返し
裏地をなるべく排して脇腹から前身頃の裏に表地を張る仕様です。
コットンジャケットやリネンジャケットなどのカジュアルジャケット、アンコン仕立てとの相性がとても良く、秋冬シーズンではフランネルやツイードの生地相性が良い仕立て方です。
私は夏用スーツであっても総裏で仕立てています。
ヨーロッパに倣うわけではございませんが、せっかく仕立てたスーツを長持ちさせたいのと、ふとジャケットが捲れた際に裏の縫い代が見えるのはちょっと……と思うからです。
皆さんもぜひ参考にしてみてください!
※グローバルスタイルではモデルによって出来ない仕様もありますのでご注意ください。※
名古屋広小路通り店 鈴木(晴)