パターンオーダー・フルオーダー(ビスポーク)の違い【名古屋セントラルパーク店】
こんにちは。
鈴木(晴)です。
皆様はパターンオーダーやフルオーダーという言葉を聞いたことがあると思います。
しかし、その意味や何が違うのかよく知らない人や誤解している人が大半です。
今回はフルオーダーとパターンオーダーの違いについてお話していきます。
採寸方法の違い
フルオーダーとパターンオーダーの事を話すにはまず、どんな採寸方法があるのかを知らなければいけません。
採寸方法は大きく分けて2種類あり、スーツに限らず服飾業界全体で共通します。
ショートメジャー方式
短寸式とも言われており、最低でも20か所を測定する方法です。
ロングメジャー方式
バストを基準とした採寸方式で、身長・バスト・ウエスト・ヒップを測定し、あとは机上計算値に基づいた割出値との誤差を調整する測定法です。
スーツをはじめ、Tシャツやニットなどの既製品はロングメジャー方式によって平均的な体型を基準に型紙が作られています。
これらを踏まえたうえでフルオーダーとパターンオーダーの違いに移ります。
また、ここでは
・マシンメイド・・・ミシン主体で縫製
・ハンドメイド・・・手縫い、アイロンワーク等の手作業主体で縫製
という意味で使用します。
ハンドメイドであっても長い直線はミシンを使う高級テーラーもあれば、ほとんどミシンで縫い上げてボタンホールだけは手縫いという店もあるため、あくまで主体となる製法で区分します。
フルオーダー(ビスポーク)
お客様一人ひとり専用のパターン(型紙)を作成し、その人の体に合わせたスーツを作れるのがフルオーダーです。
釦位置やポケットの角度、衿の高さを始めとしたすべてのデザインを自由に変えられます。
パターン(型紙)を作成するために細かく採寸する必要があり、採寸はショートメジャー方式で行われます。
極端なシルエットにはせず、適度にゆとりを入れたジャストフィットで仕上げるのが一般的です。
その中で、かっこよさ・美しさが出るようにパターン(型紙)を作成します。
ハンドメイドで行われることがほとんどであるため、おおよそ20万円~と価格が高く、完成までに平均3か月程の時間がかかります。
海外ではフルオーダーという呼称は一般的ではなく、ビスポークと呼ばれています。
由来は担当のフィッターを会話をしながら進めて行く「Be spoke(話す)」だと言われています。
そもそもオーダーとはそれぞれの個人に合わせて仕立てるものしかなく、わざわざ「フル(全て)」と区別する必要がありませんでした。
たまに仮縫いがついているからフルオーダーだと名乗る店もあります。
部分的には正しいですが完全な説明ではありません。
フルオーダーの定義は人によって解釈が異なりますが、私はあくまでもパターンをその人専用に引いて仕立てることだと考えています。
その結果、立体化した際の数値では見えない細かなずれや好み、アイロンワークで伸び縮みさせた箇所を修正するために仮縫いが必要になるのであって、目的と順番が異なります。
また、縫製はマシンメイド(一部ハンドメイド)でパターンは独自システムでその人専用に引くというなんちゃってフルオーダーを謳っている店もあります。
動きやすさや着心地は体に合ったパターンではなく縫製によるところが大きいので何とも言えませんが、私の体感では通常のパターンオーダーよりも着心地はいいと感じます。
これをフルオーダーと呼ぶかは人それぞれです。
デメリット
前述のとおり適度にゆとりを入れて仕上げるのがフルオーダーです。
そのため2010年代に流行った体にぴったりと沿うようなタイトなスタイルや、バブル時や最近流行りつつあるオーバーサイズが良いと伝えても断られる場合があります。
もちろん対応してくれる店もありますが、それはフルオーダーの持ち味(着心地面)が半減してしまう事は覚悟した方いいでしょう。
仕上がりの形がパターンを引いた者に由来するため、センスが合わなかったり古かったりすると着心地はよくても形が気に入らないといったことが発生します。
メリット
まずは何と言っても着心地です。
人体に沿うように形作られているため、着用のフィット感が段違いであり、ジャケットの重さを感じないようにうまく重さを逃がしているためストレスを感じることなく過ごせます。
肩回りの動きや腕を上げた時などに背中やわき腹が引きつらないように仕上げられており、窮屈だと感じることもありません。
縫製がしっかりとしているため着用頻度や手入れ、生地によっては数十年単位で着られます。
そして、現代的なデザインやクラシックなデザインなど、様々な時代やコンセプトに合わせて仕立てる事が出来ます。
※例えばシングル4つ釦、ダブルブレストでの丸いフロントカットやダブルのノッチドラペル、マオカラーなど
後述しますが、パターンオーダーは用意している型紙から微調整程度しか行えません。
対してフルオーダーは型紙から用意するため、制約がありません(店によっては制約を設けている可能性はあります)。
また、基本的にフルオーダーのお店はそれぞれハウススタイルというものを確立しています。
スーツのディティールやシルエットに現れるその店特有のこだわりや個性です。
お店選びは職人の腕はもちろんハウススタイルが好みに一致するかどうかも気にして選ぶといいと思います。
パターンオーダー
元々決まった形のパターン(型紙)から微調整を加えて作るのがパターンオーダーです。
比較的安価で、既製品とほとんど変わらない価格から購入できます。
ロングメジャー方式での採寸が一般的です。
デメリット
まず、サイズの調整に限界があります。
店や工場によってその値は変わりますが、±数cmを限度としている店がほとんどです。
調整しきれない場合は妥協するかベースサイズを変えなければいけないため、その他の部分が調整しきれずにダボついたりタイトになったりする場合があります。
調整は指定の点でしか行えず、例えば足回りの太さを膝・裾口のみ指定する店ではふくらはぎが太い人はトラウザーズを細くしすぎると足が入らないため、好みのサイズまで絞ることができないといったこともあります。
また、デザイン変更できるのはあらかじめ用意しているディティール・サイズのみになる為、スーツスタイルとして一般的なデザインから逸脱した物は対応できない店がほとんどです。
※稀にそういったパターンを用意している店もあります。
メリット
個人のサイズ感の好みに対応しやすい点です。
前述のとおりフルオーダーはその人の体型に適度なゆとりを持たせたサイズで制作することがほとんどです。
しかしパターンオーダーでは、極端なサイズ感でも受けてくれる店が多いです。
(タイトにしすぎると座れなくなったり破ける可能性が高くなりますのでご注意ください)
また、シルエットが整った形になりやすい点もあります。
デメリットで挙げたサイズ調整の限界値ですが、全体のシルエットのバランスが崩れないようにという理由等から設定されているため、シルエットが損なわれづらいです。
パターンオーダー、フルオーダーどちらでもいえる事ですが、ある程度スーツにこだわりたいという方は下調べをしないでフラッと立ち寄ってスーツを作るのは絶対にやめましょう。
Henry Pooleのマネージャーもスーツを買う際にやってはいけないことというリストの一番最初に挙げていました。
例えば、ブリティッシュスタイルのスーツが欲しいとします。
しかし、日本のスーツ業界は一部を除いてイタリアのスーツの影響をかなり強く受けています。
ブリティッシュスタイルのパターンを用意している店でも胸ポケットはバルカポケットしか用意していない店や、ディティールはイギリスでもシルエットがイタリアのものしかない店もたくさんあります。
また、ホームページに選択可能なオプション一覧を載せているところがほとんどですが、一部抜粋して載せている店もあります。
ネットに乗っていない仕様でもできるかどうか事前に問い合わせてから来店するといいと思います。
グローバルスタイルはロングメジャー方式に近い採寸方式なので、採寸箇所が少ないです。
なので「これだけですか?」と聞かれることがよくあります。
実際にメジャーを当てるのがそれで十分な理由は、それぞれをフローチャートにしたときにわかります。
フルオーダー
①採寸・・・一回目の来店
メジャーをあててサイズを図っていく工程です。
採寸や生地決めの順番は店によって異なります。
②パターン作成
採寸データを元に合わせてパターンを作成します。
猫背や怒り・なで肩などの体型補正はここではまだ行わなず、仮縫い後に行う場合もあります。
③仮縫い・・・二回目の来店
作成したパターンを元に実際に生地をカット・仕付け糸で縫製します。
ポケットや釦、裏地はついておらず、生地と芯がしつけ糸で留めてある状態で試着してもらいサイズの調整、変な皺などを修正します。
裏地・釦はここで決める店もあります。
この仕付け糸で縫い、試着して調整という工程をまとめて仮縫いと呼びます。
完成前の試着を仮縫いと呼ぶわけではありません。
④本縫い
仮縫いの内容を元に修正を行い、完成状態まで縫製します。
ポケットや釦ホールなども開けた状態で再度試着してもらい最終確認を行う中縫いを挟む店もあります。
⑤納品・・・三回目の来店 or 配送
パターンオーダー
①採寸・パターン決め・体型補正・・・一回目の来店
ロングメジャー方式で採寸を行い、ベースとなるパターン(型紙)を決めていきます。
数種類のパターン(型紙)を用意している店がほとんどです。
モデルが決まったら用意してあるサイズ見本を試着して、バストやウエスト、肩、袖などを調整していきます。
調整箇所が少なく、体型を数値で2Dにしなくて良いため採寸箇所は最低限で済みます。
すでに型紙が用意されている為フルオーダーの②と、③の縫製部分が省略できます。
つまり、この見本を試着して調整という工程がフルオーダーにおける仮縫い(試着)の工程にあたります。
②本縫い
ベースモデル・サイズ・生地・ボタン・裏地などの情報を工場へ送り、実際に生地をカット縫製して完成状態まで進めます。
フルオーダーにおける中縫いのように、納品前に試着が出来る店もあります。
③納品・・・二回目の来店 or 配送
このようにパターンオーダーはパターン作成・中縫い以外は基本的に同じ工程です。
パターンオーダーの方が品質が下だといわれることが多いですが調整の幅に限界があるものの、実はやっていることはほとんど変わりません。
パターンオーダーとフルオーダーが全く違うものだといわれる理由は、採寸方式や工程ではなく縫製の仕方の違いによるものです。
パターンオーダーは価格を抑えるためにマシンメイドであることがほとんどです。
フルオーダーは職人がハンドメイドで仕上げています。
その縫製方法の違いが、パターンオーダーとフルオーダーの違いだという勘違いが広まっているのです。
確かに、少し前まではフルオーダーがハンドメイド、パターンオーダーがマシンメイドで縫製しているところがほとんどだったので、フルオーダーに比べてパターンオーダーの質が低いというのはおおよそ事実だったと思います。
しかし近年ではパターンオーダーであっても職人がハンドメイドで仕上げるオプションを用意している店が多く、一概にそうとは言い切れなくなりました。
もちろんパターンオーダーとフルオーダーの間の差がなくなったわけではありませんが、少なくとも着心地を求める方の選択肢に入る程度までは向上しています。
例えばパターンオーダーで見本のサイズを着た時に変な皺なども出ず一切調整の必要が無い体型の人もたまに見かけます。
そういった人がわざわざ金額の高いフルオーダーで型紙を引いてもらう必要がないため、ある程度の着心地でいいという方はハンドメイドラインが用意されているお店で問題ないかと思います。
グローバルスタイルスタイルでもハンドメイド縫製のモデルを用意しています。
「カイザーモデル」はハンドメイドで縫製・仕上げをしており、通常のパターンオーダーでは味わえないような着心地です。
詳しくは下記の生地をご覧ください。
ご来店お待ちしております。
名古屋セントラルパーク店 鈴木(晴)