-ジョン・ウィック-【名古屋広小路通り店】
こんにちは。
鈴木(晴)です。
またまた映画の衣装紹介です。
今回はキアヌ・リーブス主演の「ジョン・ウィック」シリーズです。
スーツを着たままのアクションがとてもカッコよく、犬が殺されるシーン以外は大好きな映画です。
めずらしく、タイトルが作品のセリフやキャッチコピーではないんですが、ジョンウィックは寡黙でタイトルになりえるようなくさいセリフはあまり言わないんです。
(引用元:https://natalie.mu/eiga/news/235994)
そもそもジョン・ウィックシリーズとは
かつて裏社会にその名を轟かせた凄腕の殺し屋ジョン・ウィックが、亡き妻が残した愛犬の命を奪われ復讐をするというアクション映画です。
そんなジョン・ウィックシリーズ2作目のとあるシーンでスーツを仕立てるシーンがあります。
ルカ・モスカという実際に映画の衣装デザイナーがフィッターとして登場します。
その時のやり取りが以下の物です。
「Mr.ウィック、これはフォーマル用ですか? 社交用ですか?」
「社交用だ。」
「お召しになるのは昼でしょうか、夜でしょうか。」
「昼と夜の服を1着ずつだ。」
「スタイルは?」
「イタリア風。」
「ボタンの数は?」
「2つ。」
「パンツは?」
「細身で。」
「裏地はどうします?」
「実戦仕様。」
これほどわかりやすい物はありません。
ただ、これ時系列がよくわからないんです。
「スーツを新調したい」という会話の後、すぐに上記のシーンになるのですがどう見ても仮縫いフィッティングの作業なんです。
ビスポークの流れについては過去のブログをご覧ください。↓
基本仮縫いは、よほど繊細な生地でなければ本番の生地を使用します。
一流の殺し屋であれば、仕事用のスーツに繊細な生地は選ばないでしょう。
なので通常の流れだと、その後の「フォーマル用?社交用?」という会話が成り立ちません。
恐らくこのやり取りは、必要なのはタキシードのようなフォーマルウェアかスーツかという確認だと思います。
しかし着ていたジャケットは衿がノッチドラペルでした。タキシードにノッチドラペルはあるにはあるんですがフォーマル用とは言い難いです。
つまりあの仮縫いは本番と同じ生地で行う仮縫いではなく、その前段階で体型補正等を確認できるゲージ(見本)で行っているということです。
ただ、ゲージ(見本)を着てそこから調整するパターンオーダーというのは考えにくいです。
あるとすれば、英國屋という日本のテーラーがやっているような、仮縫い用のゲージ(見本)を元々用意しているという説です。
何度も利用しているのなら、スーツがすぐに必要になる殺し屋界隈では当然型紙は製作しているでしょう。
劇中ではゲージ(見本)を着た後、肩幅を測って助手へ伝えています。
つまりこれは仮縫いの目的である皺の読み取りではなく、体型変化を確認するためだったのではないかと思います。
ジョン・ウィックは前作を含めると何度も引退しているのでこの仕立て屋を利用するのは久しぶりだったと思います。
そのため、体型変化があるかどうかを確認する必要があった。
そして少しでも時間的ロスを減らすためにゲージ(見本)を用意しているのではないでしょうか。
というのがあのシーンの疑問を無理やり解決させるための妄想です。
ということを踏まえて、前述の会話からデザイン、サイズ感を解説します。
いつものごとく、肩はジャストサイズです。
バストはややタイトな感じがします。
フロント釦を空けて着るのと、イタリア仕立てはアームホールを極力小さくして腕の可動域を確保するのでバストが若干タイト名倉では問題ないのだと思います。
着丈は短めです。
ヒップの半分が出る長さなので、短くできる限界です。
以前の計算式で行くと、総丈÷2-4~5cm程やっていると思います。
袖丈は普通ですが、袖筒はかなり細めになっています。
続いてパンツです。
ヒップの形が見えるほどタイトです。
ただ、股上が浅いわけではないのでそれほど動きが窮屈な感じはしません。
また、シャツが出やすいということもないでしょう。
パンツの太さですが、このシーンで「パンツは?」という問いに対して「細身で」と答えています。
しかし、原語版は実は違います。
「テーパード」
と答えています。
テーパードとは「先細りの」という意味で、パンツの裾をより絞ったシルエットの事を指します。
つまり、ジョン・ウィックはパンツ全体を細くしたいのではなく、裾を細めたシルエットにしたいというのが分かります。
ただ、股下が1クッションほどなので、極端に細くしているわけではなく、あくまでシルエットです。
なので渡り(太もも)やヒザはしっかりとゆとりをとっています。
サイズ感としてはこんなところだと思います。
デザインは、標準的なスーツそのものです。
・ノッチドラペル
・シングル2つ釦
・平行の腰ポケット
・サイドベンツ
・ノータックテーパード
・裾口シングル
特筆するところはほとんどありませんが、強いて言えばノータックのパンツにしては股上が標準からやや深めです。
続いて生地です。
基本ダークスーツと呼ばれる、暗めの色のスーツを着ています。
また、ある記事によるとロロピアーナが使われていると書かれています。
ロロピアーナはシリーズにもよりますが、スーツ生地の中でもかなり柔らかい部類です。
損耗の激しい殺し屋稼業で柔らかい生地を使うのは、タイトなサイズでも動きやすくするためでしょうか。
ジョンウィックほどになるとスーツの買い替え頻度などは気にならないのかもしれません。
もしくは映画の衣装として使用しているだけで劇中では設定が違うのかもしれません。
また、防弾機能を持たせたスーツとして登場しておりその原理も説明されていました。
セラミック複合材と炭化ケイ素で出来た防弾の生地を表地と裏地の間(毛芯等と一緒に)に挟むことで銃弾を受け止めてくれるというもの。
映像を見る感じ、通気性能は皆無なのでものすごく暑いと思います。
ですが夢があります。
ちなみに、劇中でスーツを仕立てたのはイタリアのはずですが、上記のキービジュアルではインチ表記のメジャーを使っています。
アメリカの映画だからでしょうか?
劇中では、インチとセンチが両方書いてあるメジャーを使っていて数値は恐らくですがセンチで測っていました。
北イタリア(ミラノ)等ではイギリスにスーツを教わったため、今でもインチが主流だと聞いたことがあります。
一方南イタリア(ナポリ)は自分達のスタイルに変えていくのが得意ですから、センチを使っているのかもしれません。
ともあれジョンウィックの衣装はこんな感じです。
今のビジネスマンにはぴったりのスーツだと思います。
原語版ですがYoutubeにそのシーンが上がってます。
めちゃくちゃかっこいいです。
今度ジョン・ウィックモデルのスーツを作ってみたいです。
名古屋広小路通り店 鈴木(晴)