国と形を揃えるべきか【名古屋広小路通り店】
こんにちは。
鈴木(晴)です。
客足が遠のいて時間が増えるこの時期では、自分のスーツを買おうかと悩む時間もまた増えてきます。
皆さまの採寸をする中でよく質問されるのが
「選んだ生地とモデルの国を揃えるべきか」
ということです。
なんとも思わない方もいれば、かなり気にされる方もいらっしゃるでしょう。
今日は、国ごとに大まかなスーツ・生地の特徴を紹介しつつどの組み合わせが良いのかご紹介します。
生地
まずは生地から行きましょう。
生地は世界三大毛織産地というものがございます。
尾州(日本)、ビエラ(イタリア)、ハダースフィールド(イギリス)の三か所で、グローバルスタイルは主にイタリア、イギリスの二か国の生地を取り扱っています。
イギリス生地
イタリア生地に比べるとツヤが無いものが多いですが、ハリがありクリースラインが綺麗に出るのが特徴です。
また、イタリア生地に比べてより多くの糸が使用されているので保温性があり、皺にも強いです。
今、日本市場はツヤ=高級という考えが浸透しているため、イタリア生地に押されて数が少なかったり艶が強めのものが出始めています。
イタリア生地
大きな特徴として、滑らかなツヤと柔らかさです。
最高級のゼニア、ロロピアーナはもちろん、へしゃでは真ん中あたりに位置するカノニコ、トーニャなどもその特徴が大きく出ています。
日本を含め、世界ではイタリア生地が多く使用されており、ゼニアだけでも世界の3割の紳士服に使用されているとされています。
スーツ
スーツの発祥はイギリスの貴族衣装ですが、それがイタリアに渡りそれぞれその地域に合わせて独自に発展してきました。
イギリス
スーツ発祥の地イギリスでは、スーツはファッションではなく、社会的地位を示すものです。
肩・バストを大きめに設定し、ウエストを絞ってシェイプを効かせて体格良く見せるシルエットが特徴です。
よく言われるのは、砂時計⌛のような形です。
また、肩に大きな特徴があります
・ビルドアップショルダー
袖山が盛り上がっていて、まるで太いロープが入っているように見えることからロープドショルダーとも呼ばれます。
・コンケープドショルダー
肩先がやや上向きに反りあがっている形で、ビルドアップショルダーと組み合わせることがほとんどです。
イタリア
イタリアは北部・南部でそれぞれ特色が異なっています。
・北イタリア(ミラノ)
イギリスのビスポークの影響を強く受けているため、後述するイギリススタイルと大きな差はありません。
強いて言えば、イギリスほど肩が張っておらず、ナチュラルショルダーであることが多いです。
・南イタリア(ナポリ)
スーツがイタリアに渡った当時、貴族のリゾート地であったナポリでは、肩肘張らない軽いスタイルが好まれました。
肩パッドを排除し、副資材もなるべく軽いものが使われます。
シルエットも本来の男らしく見せるがっしりとしたものではなく、体に沿った丸い印象のスーツです。
生地を支える芯地がほとんどないため、仕立て・型紙の良し悪しがもろに出てきます。
そのため縫製に関しては今でもナポリの技術が一番という声もあります。
サイズに関しては寛ぎ着ですのでゆるめに作られている事が多いです。
日本ではまったく逆の皺が出るほど細くというイメージを持っている方が多い印象です。
生地の組み合わせ
イギリス
湿度が高く、一年中気温が低い気候に対応するために堅剛な生地が好まれてきました。
近年では、ツヤのあるイタリア系の生地もよく使用されるようになっています。
イタリア
こちらも北と南で大きく分かれてきます。
北イタリア(ミラノ)
皺のないスーツが美しいとされる北イタリアでは、イタリア系の生地では柔らかすぎて仕立て映えしないため、イギリス生地が好まれています。
イギリス生地と言っても重たくしっかりとした伝統的な生地よりは、現代の生地に近いハリのある生地に近いと思います。
南イタリア(ナポリ)
皺が出来たとしてもそれすら楽しむというようなスタイルのため、柔らかいイタリア生地が好まれているようです。
着心地を追求した結果皺が出るようなディティール(マニカカミーチャ)も生まれましたが、デザインの一つとして受け入れられています。
このように元々の流れから逆転しているため、選んだモデルの国と生地を統一した方が良いということはありません。
ただ、基本的に私はイギリス生地をお勧めします。
考えとしては北イタリアの考えに近いです。
マシンメイドのグローバルスタイルでは、ハリのあるイギリス生地の方が仕立て映えがします。
一部ハンドメイドで仕上げられているカイザーモデルのみ、体型に合いやすい為柔らかい生地でも皺が出ずらいです。
その点はスタッフと相談頂ければと思います。
お勧めのイギリス生地
・DORMEUIL
1842年に創業したブランドで、パリに本社を置くフランスの服地マーチャント(商社)でありながら、英国高級生地を主力としています。
ファッションの最先端をゆくフランスならではのデザイン性と、英国の伝統技術からなる品質の高さを兼ね備えており、既製・オーダー問わず世界中のブランドから人気を集めています。
・ウィリアム・ハルステッド
イングランド北部に位置するウェストヨークシャー州のブラッドフォードにて、1875年に創業しました。
高品質なモヘアや、強撚糸によるハイツイスト素材を用いたトロピカルウールやポーラ、サンクロスなどが有名で、ハリがありつつも柔らかい風合いが特徴です。
型崩れにも強く、サヴィル・ロウのテーラーからも厚い信頼が寄せられています。
・ウェインシール
ウェイン・シールは1807年にロンドンの中心地にしてビスポークの聖地であるサヴィル・ロウに店を構えました。
2000年代にウェイン・シールは大手マーチャントであるスキャバル社の傘下に入りましたが、品質はそのまま世界から愛されています。
伝統的な雰囲気を残しつつも艶が美しい生地は、英国由来の気品と堅実な印象を与えます。
・エンパイア・ミルズ
1915年に創業し、ヨークシャーの大都市リーズの近郊ブラムレーを本拠地としたブランドです。
主に英国市場向けにクオリティーとコストパフォーマンスの高い紳士服地を生産してきました。
このブランドの特徴は、イタリア生地に負けない艶と耐久性を兼ね備えている点です。
普段使いには丁度良い価格と性能で、初めてのスーツにもお勧めです。
また、バンチ(取り寄せ)にはなりますが他の英国ブランドも取り揃えております。
ご来店お待ちしております。
名古屋広小路通り店 鈴木(晴)