ジャケットの話 台場仕立て編【名古屋広小路通り店】
こんにちは。
鈴木(晴)です。
今回は久しぶりにジャケットのディティールについてのお話です。
台場仕立てという言葉をご存じでしょうか。
おそらく、40代以上の方でスーツをオーダーされる方は割とご存じの方が多いかと思います。
日本では高級スーツのデザインとして広く使用されてきた台場仕立てについて解説します。
台場仕立てとは
ジャケットの内ポケットの周りを表地で囲うデザインを指します。
前述したとおり、日本では高級スーツに使用されていたことからオーダースーツでは必ず台場仕立てにするという人もいるとか。
しかし、スーツ発祥の地イギリスではあまり一般的ではありません。
もともとイタリアに多いデザインとされていますが、最近ではあまり使用されないとも聞きます。
デザイン
通常
通常のジャケットは写真のように内ポケットをまたぐように表地と裏地が通っています。
剣先台場(ハギ台場)
剣先台場、あるいはハギ台場と呼ばれることもあります。
後述の一枚台場では表地の面積が増えるのでジャケットの重さが増すため、ポケットの補強と交換のしやすさを第一として使用されるのがこの剣先台場です。
グローバルスタイルでは、アンコンモデル・スリムフィットモデル・カイザー レジェロモデル以外にオプション2,000円(税別)でつけることができます。
カイザー サルトリアモデルでは、オプションはかからず標準でついてきます。
一枚台場
内ポケットを含む前身頃の内側の一部が表地で切り返されているデザインです。
グローバルスタイルではモダンブリティッシュモデルのみオプション3,000円(税別)でつけることができます。
大きく分けるとこの三種類になります。
他にも、テーラーによってハウスモデルの若干の違いはあるかと思います。
現代ではあまり使われなくなった台場仕立てですが、そもそもの発祥としては諸説あり国ごとによって異なるといわれています。
まず大元の発祥はイタリアだといわれています。
スーツはイギリスで生まれましたが、その気候は一年中肌寒いため打ち込みが強く厚い生地が使用されていました。
やがてスーツがイタリアに渡り、その土地に合わせた薄くて軽い生地が使用されるようになると強度の問題から内側に芯地以外の補強として一枚台場が使用されたといわれています。
なので、イタリアでは一枚台場が主流となっていました。
ちなみにこの技術はイギリスにも持ち帰られましたが、生地が厚くなりシルエットを損なったりウエストコート(ベスト)と擦れる面積が増えて着心地が悪くなるため導入されませんでした。
なので、この台場仕立てを指す英語がそもそも存在しないとも言われています。
確かに検索してもただローマ字読みになった表記しか出てきません。
(私の探し方が甘いのかもしれません)
日本で流行った理由は、湿度が高く裏地がだめになりやすいため裏地を交換する際の手間が楽になるというものです。
まだ、安価なオーダーがなくすべてビスポーク(フルオーダー)しかなかった時代は、裏地の素材がアルパカの毛やシルクが主でした。
それらの素材は手触りはいいものの摩擦などに弱い繊細なものだったので定期的に裏地交換をしなければいけませんでした。
その時代は一枚台場が主流だったようですが、戦後は高価な表地をそこまで使用しない剣先台場が主流となっていったと言われています。
名称の由来は大砲の台場に似ていたからと言われています。
もう一つ、俗説的に言われているのは東京のお台場に形が似ているからというものですが龍力ではありません。
どちらにしても明治時代にはすでにこの台場仕立ては存在していたようです。
現代では、ポリエステルやキュプラが登場したことで強度の課題はクリアされており高級だという考えだけが残りました。
そもそもイタリアの着方であれば台場仕立てよりも裏地をつけない大見返しの方が温暖化が進んだ今では合っています。
しかし本切羽と同じく自分にしかわからない些細なこだわりとして付けるのもありかと思います。
また、ポケット自体の補強にもなるので内ポケットによくものを入れる方もご検討ください。
名古屋広小路通り店 鈴木(晴)