生地の話【横浜スカイビル店】
こんにちは。
本日は10月なのに30度を超えるようです。
寒暖差が激しく体がついていかないですね。
通勤時ももうフランネルのスラックスを履いていましたが、さすがに今日は薄手のコットンスラックスを選びました。
気温に左右されるのは大変ですが、一方で微妙な気温の違いに合わせてその日の装いを決めるのは楽しみの一つです。
シャツを変えるのか羽織ものを変えるのか、素材を変えるのかなど細かくこだわりをもって選択し、一日を通して過ごしやすかったなと振り返ると少し幸せを感じます。
昨今のスーツ業界ではオールシーズンという非常に便利な言葉が多用されています。
実際に弊社で取り扱っている生地も多くの生地がいわゆるオールシーズンといわれるクオリティでございます。
どの季節でも違和感なく使える生地という意味合いで捉えるとそれは間違いではないと思いますが、
全ての温度帯において快適に着用できるというわけではないと思っております。
一般的に目付260g/m程の綾織り地をオールシーズン物と定義することが多いかと存じます。
私の感覚としては最も中庸なボディがオールシーズンといわれているという認識です。
中庸だからこそどの季節に着ていても違和感は生じないということでしょうか。
真夏はより風の抜けの良い平織り地があり、真冬はフランネルなどより暖かい素材がございます。
厚みについてもより薄いものですと目付200g/mにも満たないような極薄地から、
300~400g/mのしっかりとした肉厚な生地もございます。
暑い時には暑い時を、寒い時は寒い時を少しでも快適にしようと考えるとそれぞれにより適した素材があるということです。
中庸なオールシーズン系の生地も本来は外気温20度前後の春や秋が丁度良いのではないでしょうか。
洋服に携わる者としてはしっかりとそれぞれの時季に応じた装いをしていただきたいと思っております。
近年では少し感じることが難しくなりつつありますが、日本には四季がございます。
春には若葉のような淡い色味、夏は軽やかな麻素材、秋は枯葉のような落ち着きのある色味、冬には温かみのある起毛素材など。
単に快適に過ごすためだけでなく、季節の移り変わりを感じる要素の一つとして洋服を楽しんでいただきたいのです。
しかしながら、現在スーツという洋服が置かれている状況を考えても多くの方にとっては中々現実的ではないという風にも感じております。
そもそも着用の頻度が高くなく沢山のスーツを持つ必要を感じていない方も多いかと存じます。
また、経済の流れやクローゼット事情、気候変動など本当に様々な要素が相まって仕事着であるスーツは最低限のコスト、数でという方が多いかと存じます。
オーダースーツ店で勤務していると実に多くの方にご注文を頂くので多少認識がズレてしまう部分があるのですが、
実際に仕事でスーツをお召しになる方の多くが量販店などで購入されているという点は現在も間違いないのかと存じます。
近年ではパターンオーダーは非常に増えてきており、大手の既製スーツ店でもオーダーを取り入れるなどオーダースーツ人口は増えていますが、まだまだスーツを着用される方の全体数からすると多くはないという状況かと存じます。
そのような状況の中で季節に合わせてスーツを楽しみましょうというので少し難しい部分もあるかとは存じますが、
一洋服屋、一洋服好きとしては是非楽しんでいただきたいと心から思っております。
2000年以前の洋服に関する書籍を読んでいると、夏と冬だけでなく春や秋もしっかりと装いを変えている記述をよく見かけます。
仕事着だけでなく、休日に着る洋服もジャケットやシャツなどいわゆるドレスウェアであり、それについても季節に応じた装いを楽しんでいるようでした。
情報が溢れ、考え方や感じ方も多様になっている世の中では「便利」なものが重宝される傾向にあるかと存じます。
「オールシーズン」、一着でいつでも使えるなんてとても便利に聞こえますが、
是非僅かな違いにも目を向けて、ささやかな楽しみを見つけて頂きたいです。
本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
皆様のご来店を心よりお待ちしております。
MARUNOUCHIグローバルスタイル 横浜スカイビル店
曽根