こんにちは。
大名古屋ビルヂング店犬塚です。
今日はふざけず、スーツについて真面目に書こうと思います。
皆さまが思い描く良い生地、良いスーツとはどんなものでしょうか。
判断基準は難しく、生地、仕立ての質(縫製工場や補正の数等)、価格、などなど様々な要素があります。
人それぞれ良いと思う価値観は異なるかと思います。
生地で言えば、近年日本のみならずイタリアや世界的に見ても、スーパー120~130程の細く柔らかい、光沢感のある生地が良い生地だとされている傾向にあります。
2010年代頃からイタリア、フィレンツェで開催されるスーツの祭典、ピッティ・ウオモで細見のスタイルが登場して以来、打ち込みの強いハリコシのある生地よりも柔らかくしなやかな生地が多く扱われるようになったのではないかと個人的に思っています。
サイズ感では全体的にピッタリとしたラインにラペル(衿)が細く(7㎝程)高いゴージライン、パンツはノープリーツが定番の時代を経て、2020年代からは、「クラシック回帰」という名のもと、英国で生まれた伝統的なスタイルが戻りつつあります。
どこのお店やブランドのテーラードのお仕立てを見てもラペルは8㎝~9㎝程が現在のスタンダードに感じます。
パンツはイタリアブランドのものでも1プリーツ入り、全体的に自然なゆとりがあるものが多く見受けられます。(細身なイタリアンテイストを得意とするフォルツァスタイル編集長、干場さんのパンツも2プリーツ入っているのを見かけました。)
個人的な意見になりますが、スーパー120~130程の生地は光沢感があり美しい反面、サイズ感によってはシワが目立ったり物理的に長持ちしないような物もあると感じます。
一方昔ながらの低速機で織られた生地はしっかりと重量感があり、最初はハリコシや硬さが感じられても着るうちに体になじんでくるような、長く愛せるものもあります。
独断と偏見ではございますが個人的に味わい深いと感じる生地をいくつか挙げてみます。
・英国フォックスブラザーズ社のフランネル
フランネルの父として称えられる英国の老舗フォックスブラザーズ。中でもミディアムグレーのフランネルは普遍的で一生もののスーツに仕上がるでしょう。フランネルの柔らかさの中にも芯のあるような感触が魅力です。
・スペンス・ブライソン社のアイリッシュリネン
リネンの中でもしっかりとしたウエイトで耐久性のあるアイルランド産のリネンは春夏シーズンにもってこいの生地です。中でもスペンス・ブライソン社の370g程の生地は着こむほどに美しいシワを描き、長い年月をかけて楽しめる生地になっております。広小路店岸田店長もお気に入りだとか。
・ホーランド&シェリー社の「ヴィクトリー」
これまた英国の老舗ですが、英国ヴィンテージ生地には現代の生地には見られない魅力的な生地が数多く存在します。堅くハリコシがありながらも美しいドレープ感とヌメリ感がある贅沢な逸品です。
・ドーメル社の「スポーテックス」
1920年にスポーツ用服地として開発されたスポーテックスは通気性と耐久性に優れ、ヴィンテージ市場でも人気の生地です。多くのカラーバリエーションがあり、グローバルスタイルでの取り扱いもあります。どっしりとした重量感はヴィンテージ生地ならではの魅力。3ピースやダブルブレストでのお仕立てがおすすめです。
ざっと生地を紹介しましたが、アパレル業界のトレンドの流れは非常に早く紳士服業界も例外ではありません。
それ故に自分がかっこいいと思える普遍的なスタイルを見つけるのが長く物を愛せる秘訣かと思います。
結局何が言いたいか分からなくなってしまいましたが、何が「良いスーツ」かの感性も十人十色、どこに魅力を感じるかは人それぞれだからこそ、紳士服は奥深く面白いものです。
皆さまも「自分はこのスタイル、こんな生地、こんなスーツが好き」と思えるものを見つけてみてはいかがでしょうか。
GINZA Global Style 大名古屋ビルヂング 犬塚